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2009夏 一人旅・回想録 17 ( 宮古駅 → 久慈駅 ) [Travel]

宮古駅に着いた。 釜石から宮古まで、1時間以上も乗車していながら、何も見ずに…、そして何も得られずに過ごしてしまった…、という敗北感が残ったような気がした・・・・・

宮古駅からは再び三陸鉄道の、今度は北リアス線に乗車して久慈駅まで向かう。
この区間も青春18きっぷは利用できないので駅の券売機にて乗車券を購入する。
列車内は学生や観光客らでにぎわっていて、既に海側の座席をはじめ横置きのシートは満席だったので、縦置きシートの隙間に座らせてもらった。
列車内は南リアス線の車両とは違って、観光列車というイメージはない。

久慈駅までは1時間半の列車旅。 「久慈か~ぁ…、琥珀の産地だな…」と心の中で呟いた後で、フッと思った…
「久慈・・・ 久しく慈しむ…?」 
仏さまの慈悲のお心は久遠で無量で、そんなドデカイものが私一人の為にかけられているだなんて… 
ありえないよ… 絶対にありえない!!
そう思う心に、「でも、知っているでしょ?」と、誰かが問うた。
そうだね・・・   私は知っている・・・・・   私は、いつも聞かせてもらっていた・・・・・・・
だけど私は、自分がそう思うとか、思わないとか、 今日は感じたとか、感じなかったとか、 いつも いつも 私の‘思い’でそれらを打ち消し、いつも いつも 私の色に塗り替えてきたんだ・・・・・
何も信じない・・・  信じればいつか裏切られ、傷つくだけだから・・・
誰も信じない・・・  信じられるのは自分だけ・・・、私しか私のことをわかってあげられないから・・・
知らず 知らずの内に、頬に一滴の涙が伝った・・・・・・

宮古を出た列車は、しばらくの間山中を走る。 海は、遠くに時折見えるだけでリアス線としての意味を疑う。
そんな時、 「遠くから見ているだけじゃダメだよ。 海水にドボンと浸からなきゃ~。
それが‘聞く’って言うことじゃ~ないのかな~ぁ。
見ているだけじゃ~実際のところ、何もわからないでしょ! 水温も、深さも、味も・・・。 
これを人から聞かせてもらったって、何の実感もないから信じられなくって当~然じゃん!」
と、心の声が馬鹿にしたように囁いた。

長いトンネルが幾つも続く。 やっとトンネルから出たと思えばすぐに次のトンネルに入ってしまう・・・。
いつになったら海は見えるのだろう・・・、 また暗闇・・・、 今度は長いのか 短いのか・・・。
このトンネルを抜け出た先に青い海と光の世界を夢見て、でもトンネルを出た先には、私が期待していた風景とは違う、さっきと何も変わらない景色に幻滅し・・・、 そして、またトンネルへと入って行く・・・。
その繰り返し・・・ どこまで行ってもまたその繰り返し・・・  こんなのイヤだ・・・、 も~イヤだ!
そんな時、また、「違うでしょ?! 果てしなく続く闇のトンネルから抜け出たいと思っているのは、私の願いじゃないでしょ?! 
この暗闇のトンネルから早く抜け出させてあげたい!と本当に願っておられるのは、誰? そして闇の中で泣いているのは誰なの?」

何を見ても、何を聞いても、次から次へと湧き出す御法の声に、もう反発する気力も失せていた・・・
そんな時、車内アナウンスが次の停車駅を告げた。 「次は、ぜったい~ ぜったい~」
も~勘弁してよ~ と 思いながら駅の看板を見ると、「摂待」と書いて「せったい」とのルビがふってあった。
私、頭も耳も ど~かしちゃってる! 
「摂待」・・・ この漢字から発せられる御法的な嫌なイメージを回避しつつ、それでもメモを取ってしまう自分が悲しい…

宮古駅を出て40分、島越駅まで来てようやく海岸線まで見えるようになった。
でもやはり、港や海水浴場の風景ばかりで、リアス式海岸という荒々しさは微塵も感じられない。

3143640車両後方部の縦置きシートが空いたので、席を移動して先ほど食べそびれた駅弁を袋から取り出す。
時刻は、ちょうど16時を過ぎたところ。 お昼抜きでも空腹感はなかったが、せっかくお勧めの駅弁を買ったのに腐らせてしまうのはもったいないし…と、封を開ける。
ハモニカ飯弁当(¥500)のハモニカとはメカジキの背びれの付け根部分ことで、柔らかく上質のトロ肉を甘辛く煮込んだものがご飯の上に乗っていて、とても美味しく量も女性向きでペロリと平らげてしまった。

3141127ちょうど食事が終わった頃、堀内駅の少し手前で車内に観光アナウンスが流れて列車が徐行をしはじめたので、私はクルリと身体の向きを変え子供のように窓に向かって逆さに座りなおしてから車窓を大きく押し上げた。
すると、私の髪をゆらして車内には夏らしからぬ涼し気な風が流れ込み、私は思わず瞳を閉じてその心地よい風の音に耳を澄ませた。
列車が完全に停車して写真タイム。 私がゆっくりと目を開けると、ここまで来て初めて太平洋に面した三陸リアス式海岸らしい断崖の景色をほんの一部だけだが望むことが出来た。

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2009夏 一人旅・回想録 16 ( 釜石駅 → 宮古駅 ) [Travel]

山田線は、釜石駅を出てからしばらくは住宅街の中を走り、波板海岸駅を過ぎた辺りから海がきれいに見え始める。
そして30分ほど行くと、本州最東端の駅である岩手船越駅がある。

見上げれば、重っ苦しく空を覆っていた分厚く灰色の雲は南北に割れ、まぶしいほどの澄み切った青空が真上に覗いている。
それを見上げていた時、無意識の内にあるメロディーを口ずさみ歌っている自分に気付いた。

♪   深き御法に 遇いまつる   身の幸なにに 譬うべき
    ひたすら道を 聞き開き   まことの御旨 いただかん   ♪

何だって私はこんな歌を口ずさんでいるんだろう…  私ってば、ど~にかしてる!!
と、思わずムッとする…  こ~ゆ~意地悪をするのは、仏さまの仕業以外に考えられない!
「私は忘れたいんだって言ってるでしょ!!!」 と、険しい表情で無言のまま叫んでみても、やっぱり頭から離れてはくれない。
私は大きなため息をひとつついて うつむきながら観念した。 すると、フツフツと穏やかな言葉が胸の中に 一つ 二つ と、ゆっくり沸き上がってきた。

阿弥陀さまは、ただ、称えてくれって仰ってる・・・・・ 
ただ称えてって願っておられる・・・、 
何もわからない今のままの、このままの私でいいって・・・・・
称え心も起こらない、こんな私のまんまでいいから、ただ称えてくれって・・・・・

深い 深い この御法と、もう出遇っているじゃない…?! 
この命を受けて、この御法と出遇って、そして、こんな幸せなことは他にはないんだって聞かせていただいたよね…
迷いに迷って、やっと聞かせていただける身になったのに、その御心から逃げてど~なるの?
“死”に逃げ込んでど~するの?  “死”があるから今日まで逃げてきたんでしょ?

溢れ出した涙が止まらなくなった・・・・・
「ど~してそんなこと言うの? ど~してこんな気持ちになるの? ど~して、ど~してこんな私に聞かそうとするの? ど~して、ど~して、ど~して、こんな私なんかに届くの? 私、何、響いちゃってるのよ…!」
一生懸命声を殺そうとハンカチで顔中を覆っても隠し切れない嗚咽と、涙と、鼻水…。

そして、 私は一人じゃない・・・・・  そう思ったら、また涙が溢れた・・・・・

どれだけ泣いていたのだろう…
通路を挟んで隣の席に座るおじさんが、心配そうにこちらをチラチラと見ている。
車掌さんも、声をかけようか かけまいか…、と、ぎこちなく黙ったまま通り過ぎた。
私は、泣くよりも小さな小さな声で、「南無阿弥陀仏」と称えた。 心を置いて、ただ、「南無阿弥陀仏」と呟いた…

窓の外を見上げると、いつの間にか先ほどまでの青空は再び灰色の雲に厚く覆われ、ドンヨリとした重っ苦しさが空いっぱいに広がっていた。
いつになったら晴れるのだろう・・・・・
いつになったらスッキリ明るくなるのだろう・・・・・
私じゃ空の天気は変えられない・・・、 私に変える力があったならば・・・・・・・・

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