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2009夏 一人旅・回想録 15 ( 盛駅 → 釜石駅 ) [Travel]

3141125三陸鉄道・南リアス線の列車は、一両きりのディーゼル・ワンマンカーで、私が乗車した列車の車両の前方には漁師道具の網や貝などでデコレーションが施されていた。
これは、上下線共に一日一本ずつ列車内にて手作りのお漬物やお菓子などを期間限定で販売する産直コーナーのある‘産直リアス号’なのだそうだ。

観光列車といっても沿線住民にとっては重要な足となっているリアス線であり、乗客の大半は地元の住民。 この鉄道目当てに乗車している観光客は10人にも満たないほどであった。
恋し浜駅で通路を挟んで隣の海側のシートが空いたので、私は意地悪おじいさんを残してお隣さんに移動し、ここからはのびのびと車窓からの風景を楽しんだ。 
そのおじいさんも次の駅で下車をし、少し前まで混み合っていた車内はとても静かになった。

時刻も1時近いし、乗客も極僅かなので Lunch time にしようかな♪ と、気仙沼駅で購入した駅弁をテーブルの上に出した。
ここで予想外の事態が・・・。 次の三陸駅より某ツーリズムの団体客が、三陸鉄道・リアス線の乗車体験とかで観光バス数台分の人間がこの列車へと乗り込んで来たので、列車内はたちまち通勤列車状態になった。
もちろん全員座ることなんて不可能。 立ち乗車の人はおしくらまんじゅう状態で、車窓からの風景を眺めることができた人なんて、半分もいないんじゃないかな~ぁ?
それ故にツアーの団体客からはブーイングの嵐で、あちらこちらから グチ、ぐち、愚痴が延々と続く!
しかし、満員列車にも参ったけど、この愚痴にも参った・・・。 車内に流れる観光案内のアナウンスも聞えないし、こんな状態ではとても Lunch time だなんて言っていられない・・・、 と、Launchはあきらめてお弁当を袋へと戻す。

そんな中、吉浜駅の先で列車が徐行し始めた。 一瞬静まり返った車内に、「ここから眺める吉浜海岸の風景が、三陸南リアス線の最大のビューポインです」との案内が入った。
その景色は、御世辞にも美しいとは言い難い、畑と民家と海が見える極々ありふれた風景で、「え゛っ? マジ?!」と、口からこぼれ落ちそうになる。
もちろんそう思ったのは私だけではない。 列車内のブーイングは先ほどにも増して盛大なものとなり、団体客の不満の嵐と、それに耐える個人客の苛立ちが列車内に渦巻いていた。

3141126これを過ぎると終点・釜石駅まではあと20分ほどだが、この間、いくつかのトンネルをくぐり抜けるだけで、「これがリアス式海岸線だ~!」って言えるような景色にお目にかかることは出来なかった。
次の乗り継ぎ駅の一つ手前、平田駅を過ぎた所で再び列車は徐行を始め車内に観光案内が流れた。
進行方向右手前方の丘の上に、海を見つめて立つ真っ白な観音菩薩像。
これは釜石大観音と言って高さは48.5mもある大きなもので、海の安全を見守っているのだとか。
由来はともかく、この時、灰色の雲を溶かしていくのような強い日の光が真っ白な丘の上の観音像に反射して、本当にきれいな光り輝く観音様に見えたのが、なんだかとても嬉しく思えた。

南リアス線の下りの終点駅である釜石駅に到着して、ここで団体客はバスへと戻り、私は再び青春18きっぷを使ってJR山田線に乗りこんだ。 列車内は空いているしとても快適。 

遠くの空の雲の切れ間から青空が覗き、みるみる天気は回復傾向。
まるで私の心みたいだ・・・・・

三日前、笑っていいのか、泣いていいのかもわからない不安定な心のままにこの旅に出た。
分厚く低く立ち込めた雲は、時折声を殺して泣いたり、時には大声を上げて激しく泣いてみたり…、 でも、一度として晴れることはなかった。
僅かに日の光が差し込んだとしても、すぐにその切れ間を修復してしまう雲は、まるで仏さまの光明を、自分の心で次から次へと埋め固めていくみたいで・・・・・
でも、それが止められない・・・・・  光なんて信じない…  光なんて見たくない…
だけど、今はなんだか穏やか気持ちで光を待っている私がいる。
早く晴れて欲しい! 光を浴びたい! この重っ苦しい雲を溶かして! って思う。

列車は、ひとり静かに走り出した。

2009夏 一人旅・回想録 14 ( 気仙沼駅 → 盛駅 ) [Travel]

快速列車では小牛田駅を出てから1時間20分で次の乗り継ぎ駅である気仙沼駅の二つ手前にあたる大谷(おおや)海岸駅は、駅のまん前が海水浴場というロケーションであった。
でも、真夏だというのに誰一人として海水浴客はいない… 冷夏だからかな~?
そういえば私も昔、宮城県の海水浴場でよく泳いだけど、浜辺はいつも貸切状態に近いものがあって、それが常であったから、初めて地元(愛知県)や北陸(若狭湾)近辺の海水浴場に行った時のあの混雑振りにはひどく驚いたものだった。
ちなみにここ大谷海岸駅は、日本一海水浴場に近い駅として有名なのだそうだ。

気仙沼駅に着いた。 予想以上にローカルな駅。
今日はここで駅弁を買っておかないと、お昼ごはんを食べそびれてしまうおそれがあり、20数分間の乗り継ぎ時間を利用して一旦改札を出て駅のキヨスクへと向かう。
駅はしっとりと落ち着いたいい感じなのに、改札の駅員(駅長かも…)さんがカシャカシャしている上に態度も横柄でちょっと気に入らない。 駅員の都合に合わせた時間にしか改札をしてもらえず、改札口の前に整列をさせられてから改札を受けて通るのは始めての体験。
「なんで?!」と思ったが、ここで議論しても始まらない…、 これが気仙沼の流儀なのだろう…。

駅員はいただけないが、気仙沼駅のキヨスクのおばちゃんはとっても気さくでいい感じ!
短い時間だったけど、おばちゃんとのおしゃべりは旅の一服が出来た。 そしておばちゃんお勧めの駅弁‘黄金龍のハモニカ飯’と、‘林檎のどら焼き’を購入して次に乗る列車を待った。

気仙沼駅から乗車した列車はここが始発駅ではなかった為、希望のシートには座れなかった。
乗客のマナーは都会とは違ってあまり良いとは言えない…。 2人掛けシートを向かい合わせにした4人分の座席を荷物などを置いて一人で占領している客が往々にして見られる。
「ここ、座ってもいいですか?」と尋ねれば空けてくれるだが、「俺が俺が…、オレのオレの…」、という どこかで聞いたフレーズ丸出しの場面に度々出くわす。
しばらくして乗客の乗降に伴い海側のシートが空いたので移動する。 LUCKY~!!

大船渡線の列車に揺られること1時間、次の乗り継ぎ駅である盛(さかり)駅に到着。
ここからはいよいよ観光列車・南リアス線に乗車となる。
つまり、青春18きっぷは利用出来ないので三陸鉄道の窓口のおばさんに言って乗車券を購入しようとしたのだが、「自販機で買ってくれ」と冷たく言われ、長らく待たされた後だっただけにちょっとムッとしたが、券売機に気が付かなかった自分も悪いので素直に自販機にて切符を購入した。
しかし、後々になって知ったことだが、青春18きっぷを見せて窓口で乗り継ぎの切符を購入すれば半額で割引乗車券が買えたそうで、そんなこととは知らず、おばさんにしてやられた! 

乗車券購入でかなりもたついた為、南リアス線の列車内は既に満席に近い状態となっていたが、1コーナーだけ空いているシートがあった。
そこはテーブルを挟んでペアーシートが向かい合わせになった4人分の座席で、進行方向向きの窓際のシートに一人のおじいさんが座っていたのだが、隣りのシートにはおじいさんの手荷物、そしてコーナーの入口を塞ぐかのように傘が向かいのシートに橋渡しされており、おじいさんは正面の座席下まで無造作に足を投げ出していたので、彼以外、誰も座ることが出来ない状態であった。
しかも、そのおじいさん、とても大柄で気難しそうな恐い顔をしているので誰も何も言えず、数人の乗客は座ることが出来ずに立ったまま横目でおじいさんを恨めしそうに見ていた。
「あぁ~、まただ…」と思いつつ、私は単に座りたかったのでそのおじいさんに、「ここの座席、空いていますよね?」と尋ねると、おじいさんは無言のまま私に視線を向けて、私がその返事を待たずに「ありがと~♪」というと、おじいさんは無言まま視線を窓の外へと移した。
私はシートに橋渡しされていた彼の傘をどけて、おじいさんと対角の逆向き通路側のシートに腰を沈めた。

車窓からの風景も思うように見られないし…と、私がテーブルの上にノートを広げてこのことをメモし始めると、今までそっぽを向いていたおじいさんが私のノートをチラッ チラッと盗み見しようと、視線に落ち着がなくなってきた。
私はこうしておじいさんの悪口を書いている訳だし、これを本人に見られては都合が悪いので、自然を装いながらそっとメモした部分を手で隠しノートに記入し続けた。
しかし、私が記入した部分を手で覆い隠したことで、おじいさんはますます私のノートが気になったみたい。
そんなおじいさんのしぐさが可愛くて、可笑しくて、ついつい私が一人笑いをすると、今まで身じろぎもしなかったおじいさんがゴソゴソと落着きをなくしはじめた。
ムチャムチャ笑える!
私が笑いを堪え切れずにおじいさんに笑顔を向けると、おじいさんは慌てて窓の外に視線を移して何事もなかったかのように装う。
この、一見恐そうで意地悪っぽそうなおじいさんのおかげで、今、私はすごく楽しい(^^)v
私って、性格悪~(^.^;)

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