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2009夏 一人旅・回想録 9 ( 郡山駅 → 仙台駅 ) [Travel]

今日、二回目の乗り継ぎ駅である郡山(福島)駅では乗り換え時間に余裕があったので駅構内の散策でもしようかとも思ったが、体力も本調子ではなかったし、冷房の効いた乗り継ぎ列車へ早々に乗り込んだ。
そして頭の中で日本地図を描いて現在地の確認をしながら、そういえば以前、新潟の小出から只見線で福島入りをしようとした時、線路内に雪崩れ込んだ雪の影響で列車がストップしてしまい、結局会津若松まで来ることができなかったことがあったな~ぁと懐かしく思い出す。

列車が動き出した。 
正面のシートに、まだ二歳にも満たない男の子が、時々奇声を上げてはぐずったり、かと思えば目新しいものを見つけては興奮ぎみに喜んだり、その度に母親が叱ったりなだめたりしながら手を尽くしているのを見て、YMさんがおっしゃった、「私らは二歳児の子供と何ら変わらへんで~!」と言われたことをフッと思い出した。

少なくともこの私は、両親に望まれてこの世に生を受けた。
生まれたばかりの私に、父も母も、「健やかに育って欲しい、幸せになって欲しい」と願いをかけて私を慈しんでくれた。
でも、そんなこと私は知らない…。 ほんの少し、それも時々、自分の都合に合わせてそう思うだけのこと…。
この世に出て間もない頃の私は、「お腹が空いた」「オシメが不快だ」「もっと愛して」と、その場限りの一方的な欲の心で泣いたり笑ったり叫んだり…、 そう、ちょっど目の前にいるあの子みたいに…
私は、父や母の、私にかけられた願いなど知る由もなく…、また知る智恵すらなく…、 たとえそれを聞かされたとしても、赤子の私には親の願いなど到底理解出来るはずもない…
仏さまから見られた今現在の私は、あの頃の私…、赤子の時の私と何ら変わりがないのだと、目の前で騒ぐ子供にまざまざと見せ付けられた。
そして私にはその子を見て疎ましく思う心しか持ち合わせていないが、私の親さまは、そんな無慈悲で一方通行の心しかない癇癪持ちの私を一度も疎ましく思うことなく、いつも いつも抱きしめてくださっているのだといつか御法座で聞かせていただいたっけ・・・。

嫌になる・・・・・・!
その御心がチットもわからん自分が嫌になる・・・・・・!!
わからん、わからんと自分を責めて苦しむくらいなら、いっそ誰かのせいにするか、それともそんなことなどすっかり忘れて自分勝手に生きるか・・・
そうだった! そうだった! 私はこれを捨てるために旅に出たのだ! 何をやっているんだ、私は!
さ~ぁ、気分を切り替えよう! 仏法なんてクソくらいだ!!!

郡山から福島駅までは住宅街の中を列車は進む。 そして、福島駅では今日三回目の乗り継ぎをする。
雲行きが怪しくなる中、列車が住宅街を抜けて山里へと入ってゆくと路面が少し濡れていた…、どうやらここら辺りではひと雨降ったようである。

列車内は結構混んでいる。 そんな中にあって、私の心中には小さな苛立ちが頭をもたげ始めている。
神経がかなり過敏になってきている…、 まだ二日目の午前中だというのに、既に疲れが出てきたか…

宮城県に入ると、列車は田園風景の中を軽快に進んでいく。
低く垂れ込めた雲が山の裾野を白く染め、雨上がりの露を乗せた木々や稲の緑と相まって美しいコントラストを描き、まるで一枚の絵を見ているようだ。
そんな景色に少しずつ心のエネルギーを回復させ、今日四回目の乗り継ぎ駅である白石駅にて仙台行きの列車に乗り換えた。

「仙台」・・・、やっぱり懐かしい響きがする。 父の生まれ故郷だ。
おばあちゃんが生きていた頃は毎年お盆休みに帰省して、一年に一度の再会を存分に楽しんだ土地で、数々の夏の想い出がつまっている。
仙台を通り過ぎることは何度かあっても、この街に立ち寄るのは、かれこれ二十年振りになろうか…。

仙台駅に到着。 やはり東北一の都会と言った感じで、駅も人も活気に満ちている。
お腹は空いていなかったが、とりあえず仙台駅にて一番小さな駅弁を購入する。
しかし、落ち着いて食べられる場所もなく…、しかたなく次に乗る予定の地下鉄のホームにてチャチャッと昼食を済ませた。

仙台駅からは石仙線(都心の一部のみ地下鉄)に乗り換えて、今日の目的地である松島へと最後のコマを進める。
そういえば仙台に初めて地下鉄が開通した時、仙台の友達がすごく自慢してたっけ? あの子、今頃ど~してるかな~? な~んて、やはり懐かしい想い出が随所で湧き上がってくる。

仙台駅から乗車後、しばらくの間は今回の旅行で始めての立ち乗車となった。
車内は部活帰りの高校生らでかなりごった返していた。

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2009夏 一人旅・回想録 8 ( 宇都宮駅 → 郡山駅 ) [Travel]

二日目、朝6時起床。 昨夜は睡眠薬を使わずに鎮痛座の服用のみでもグッスリと眠ることができた。
朝食はHOTEL内のレストランにて郷土料理のBuffetをいただく。 
地物野菜や栃木の名物・湯葉などの美味しそうなお料理を目の前にして手を合わせたところで我ながら驚いたのは、今まで自発的に出たことのない食前の言葉がついうっかりと口をついて出た。
合っているのか間違っているのかはわからないが、取り合えず口を閉ざすことなく声に出しながら、でも心中では、「深く御恩を喜ぶことも出来ないし、有り難くいただくこともできないけど、このご馳走にありつけたおかげ様をいただきます!」と変換して朝食をいただいた。
これを見ていた向かいのテーブルで食事中の男性が、あっけに取られてこちらを見ているのがとても可笑しかった。
レストラン内はビジネスマンonlyで観光客とか女性の姿は見当たらない。
一人寂しく食べている人、上司と向かい合わせで居心地悪そうに食べている人、同僚に愚痴をツラツラ並べて食べている人などなど、皆それぞれの朝が始まったんだな~ぁ…、でも…、今日、自分に何が起こるかなんて皆誰もわかっていないんだよな~ぁ…、 この私も・・・・・

朝食後、HOTELの客室にいても落ち着かないので早めに Check Out して駅へと向かう。
朝の8時少し過ぎ、通勤・通学の人波を掻き分けながらホームに立つと真夏の蒸し暑さがジワジワと肌に伝わり、そんな中で新聞を広げてザッと目を通す。

そういえば、昨日・旅の初日にあった先行きの見えない不安というものがすっかり消えている・・・ なぜだろう・・・
私がバカだから…? それもある…。  
ただ何となく、一人で旅をしているような気持ちにはなれない…、という実感もある。
「仏さまとの二人旅?…」 そんな思い付きを慌てて頭で打ち消して新聞記事に意識を戻した。

ホームに電車が入ってきた。 …が、しかし、ドアが開かない…。
私の後ろに並んでいたおばさんが私の横からニョキッと手を伸ばして無言のままドア横のボタンを押す。
おぉぉ~、そうだった! JRの田舎路線ではプッシュ式の自動ドアで乗客自身がドアの開閉をしないといけないということを思い出して、田舎に来た喜びに軽く感動した。

今日も定刻に列車旅はスタートした。 宇都宮の町を抜けると緑の田園風景がどこまでも続く。
那須駅を過ぎて今日一回目の乗り継ぎ駅となる黒磯駅にて乗り換えた列車内で絵描きさんと出会う。
列車の停車時間を利用してスケッチされたその絵は誰もいない黒磯駅のホームの風景で、私は彼のスケッチブックを覗き込みながら一言二言会話を交わした。
目で見たもの…、耳に聞いたこと…、そして心に感じたこと…、 それらを彼は絵に表わして絵に残し、私は文字にしたためて文字に残す。
「どうして残したいのでしょう~ね~・・・?」とつぶやいた私に、「どうしてでしょうね~・・・?」と受け答えた彼はスケッチブックを静かに閉じて、逆に私はノートを広げてその思いを文字にした。

黒磯駅からの東北本線は所々にローカル線の趣を残し、車窓からの風景は、深まる緑と野生的な素朴さで見ていて飽きることがない。
まだ色を残した紫陽花の花や土手に咲く白いユリの花が、まるで季節を巻き戻し過去へと引き返してくれたように、目にも心にも穏やかさを届けてくれた。

しかしこの列車、車内アナウンスが あったり なかったり … もし途中下車を要する旅ならば、ついうっかりと乗り過ごしてしまいそうで気が抜けないな~ぁ …

「なぜ? どうして私は人間なのだろう・・・?」 と、不意に自問する。
こんな思い付きにも気が抜けない・・・ 油断した一瞬に突然湧き出してくる得体の知れない考え…。

  今生で決着をつけねばならないことがあると聞かされた。
  私はそれを知っていながら自身の心に振り回されるままに、
  時には求めるフリをしてみたり…、 
  時にはど~でもいいやと投げ捨ててみたり…、
  それでもこれを忘れ去ることができずにいる私って、
  いったい何がしたいんだろう…、 
  いったい何を望んでいるのだろう…、
  私・・・・・  何をやってんだか・・・・・・

ノートから目を上げて、フッと向かいのガラス窓に映る自分の顔から視線をそらした。 そして、ハッとした。 
私は自分の姿のみならず、自分の心からも視線を背けているのではないだろうか・・・
私は、目に映る自分の姿も、法の鏡に映し出された自分自身も、大嫌いだ! 見たくない!
そう思った時、思わず叫び出しそうになった。 もし、周囲に誰もいなかったら大声で叫んでいたかもしれない。
「うるさい!うるさい!  仏法なんか大っ嫌いって言ってるでしょ! 思い出したくないって言ってるでしょ! とっとと頭から消え去れ~~~っ!!!」  って・・・・・

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