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2009夏 一人旅・回想録 23 ( 霊場恐山 2 ) [Travel]

恐山菩提寺の総門をくぐって境内に入る。 参拝客は数人しかいない…  思っていたよりも静かだ。
永代常夜灯が両脇に立ち並ぶ参道を、一歩一歩ゆっくりと進んでいく。
山門近くまで来ると、その手前両脇の小石を積み上げた小さな山の上に地蔵尊が穏やかな表情でたたずんでおられ、その小山には何本もの風車が色鮮やかな花のように供えられていた。
山門は比較的新しく、見渡せば寺務所などの建物もあまり古さを感じさせない。
その山門をくぐると右手には薬師の湯、左手には小滝の湯と冷抜の湯があり、中を覗くと白濁色の湯が湯船いっぱいに湛えられていたが、誰も入浴はしていなかった。
さすがに観光客の行き交う見学コースで入浴する… というのは勇気がいるけど、ホントは入りたかったんだけどね・・・
参道の一番奥にはご本尊の羅陀山地蔵菩薩が安置されている地蔵殿があり、ここも改修されたばかりとみえ新しくきれな建物であった。

この時、騒がしく走り寄って来た小学生の兄弟が境内の石を投げ合ったりしてとても迷惑だったので注意をしようとしたところ、彼らの祖父らしき人が駆け寄ってきてその少年らに対して酷い言葉で叱り飛ばした。
兄弟は祖父に叱られ内心はショゲているのだろが、表面上は負け惜しみの皮を被りその威勢は止まらず、これに輪をかけて祖父の怒りは浸透し、聞くに堪えがたい言葉でその兄弟に罵声を浴びせた。
一方、兄弟の父親は何も言わず一人離れて遠目に見ているだけで、祖母と母親も少年らのことは感知しておらず二人で世間話などをしている。
その祖母が、「お賽銭は5円と相場が決まっているのよ!」と言いながら財布の中身をさばくっていると、祖父に叱られた弟の方が祖母の元へとやって来て、「どうして5円なの?」と尋ねた。
すると祖母は、「神様と幸せなご縁(5円)で結ばれますように!っていう意味よ!」と得意気に答えた。
思わずズッコケタが、私も子供時分、祖父母から似たようなことを教えてもらったことを思い出し苦笑いを噛み潰す。

その騒がしい家族の登場によってすっかり恐山気分を削がれてしまった。 それどころか世の中に対しての怒り心まで噴出し、私は無意味に腹を立てていた。
彼らが立ち去るまでのしばしの間、私は自分に湧いた怒りの心を抑えることに専念しながら、いったい私はなぜこんなにも苛立っているのだろうか…、何に対して腹を立てているのだろうか…、 と 考えてみた。
あの悪ガキ兄弟に対して…、口の悪い祖父に対して…、子供に責任を持てない両親に対して…、無知な祖母に対して… そして世間のいいかげんな常識に対して? 等々…。
考えるまでもなく、私は全部世間が悪いと思っている・・・、 自分以外の他人が悪いと思っている・・・ 
そして自分には、知識があって…、正義感があって…、モラルもあって… と、極甘の自惚れしかない・・・
そう気付くと、今度はそんな自分自身に対して怒りの心が湧き上がり、しかも、私の腹を立たせた全てのモノが悪いんだと言い切っている心は少しも衰えを見せずに、ゴチォ混ぜの怒りで私は赤面した。

あ~ぁ・・・ すっかり気分が壊れてしまった… と、本殿はそのまま素通りして順路通りに左手奥へと伸びる道を上がって行った。
その先には、 殺伐とした…、 荒涼とした…、 と 言うよりも、殺風景ながらも、どこか存在感のある岩場の風景が広がっていた。
まずは例のファミリーとの距離を広げるために、彼らとは別のルートをとって右手の山へと向かって伸びる歩道を登っていく。
そこは奥の院不動明王へと続く参道で、その小高い丘を少し上がった所で来た道を振り返ってみると裏山から見た霊場恐山を一望できて、その風景に少しずつ恐山気分(?)が戻ってきた。

恐山奥の院はその道をもう少し森の中へと上がって行った所にあって、 ・・・・・ でもね、小さな不動明王の石像があるだけで、ゴミだらけのガックリとするような場所であった。
その時、背後に人の気配がしたので振り返って見ると一人旅の男性が登ってくる姿が見えたので私は早々にこの場を後にして山を下り、その途中の景観の良い場所で再び立ち止まって遠く全景を見渡した。
霊場恐山 不動明王の丘より

何もない・・・・・・  目の前に広がる風景に、私は何の意味も見出せなかった…。
ただ、今ここにある自分と言う存在を見つめた時、・・・・・・  このままでは私の存在理由も意味を成さずに終わってしまう… と思った…。
私の存在理由って何・・・・・・・?  何なの?! 

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