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聖  ~ 夜の街で見つけた歌 ~  [随筆日記]

仲間と過ごした楽しい夜のひと時。  宴は終わり、皆それぞれの家路へと急ぐ。
一人が嫌いなわけじゃないのに、楽しい時間の後の一人ぼっちは殊更にこたえる・・・・・
空を見上げても街のネオンが視界を遮り星ひとつ見えず、車の行き交う街角には風の音さえ耳に届かない…。
周囲にはこんなにたくさんの人たちがいるのに孤独感は深まるばかりで、立ち止まったならば私の時間だけが止まってしまったように、一人取り残されたような気持ちになる…。
一人きりで歩く夜の街。 一人が寂しいくせに声をかけてくる人たちは疎ましく感じる。
私の帰る場所は一つだけ…、 そこへ帰りたくないわけじゃないのに、何故だか足が重い…。

駅へ近づくにつれ人波は増し、自分のペースで歩くことさえままならない。
そんな都会の夜の街でフッと顔を上げて、すれ違う人たちに視線を向けると、一人疲れた顔をしている人も、仲間と楽しそうにはしゃいでいる人たちも、また仲睦まじそうに腕を組んで歩く恋人たちでさえ、何故か皆、独りぼっち…、孤独に見えてしまう・・・・・
心が寂しい時には、寂しいメガネでしか世界を見られないのかもしれないね…

駅のあるビルへ入る最後の交差点で信号を待っていた時、この都会の夜には不似合いなメロディが聞こえてきた。
それは、優しく包み込むようなピアノのメロディと、空に澄み渡るようなボーイボーカル。
どこだろう…、と辺りを見渡すと、交差点の先、駅ビルの前に幾人かの人集りができていた。
信号が青に変わって、私はそのメロディに引き寄せられるようにその人集りの輪の中で足を止めた。

ピアノで弾き語るその曲は恋の歌だった…。  
メロディに乗せてその曲の歌詞が私の乾いた心にスーっと沁みこむようだった…
なんだか とても懐かしい…
「恋なんて鬱陶しいだけ! 面倒くさいじゃん!」 なんて、結構長~~~い間 思っていたから、恋の経験は希薄だけど、何だか いいな~ぁ、なんてフッと思った。 今さら遅いけどネ?!

「人の一生なんて、アッと言う間ね!」 …って、 最近とてもそう思う。
昨日、厚生労働省が発表した「2008年簡易生命表」による日本女性の平均寿命は86.05歳。 
もし 私が86歳まで生きることが出来たとして、まだ折り返し地点にも来ていないが、気持ちはもうラストスパートみたいな感覚…
今まで私は何をしてきたのだろう・・・
そしてこれから何の為に生きていくのだろう・・・

考えてみたら、死に物狂いで勉強したことも働いたこともないし、命をかけてのめり込んだものもない…
せいぜい心狂わすほどに真剣になったのは「恋」をした時くらいなもので、それでもたった2,3年のこと…。 
私の人生、 いつもただ生きることだけに一生懸命だったような気がする…。
人生86年間を前提として残り半分以上もある私の人生…、 やっぱりどこまで行ってもただ生きるだけ?
それじゃ~、受け難い人身をいただいた意味がないじゃん・・・・・・!

路上ライブが終わった。
人だかりはアッと言う間にバラけて、人々は足早に家路へと先を急ぐ。
私は歌っていた彼に声をかけた、 「今日は素敵な歌をありがとう!」 と。
すると彼はとても嬉しそうに、「握手をしてもいいですか?」と言って私の右手を両手で包んだ。
そして彼が自分の曲を吹き込んだという名前も何も書いていない真更なCDを購入して彼と別れ、私はまた独り、駅へと歩き出した。

こうやって “時” も “思い” も、私の中を刻々と通り過ぎて行く。
人生86年なんて、アッという間に終わってしまう。 
このまま、ただ生きているだけでいいのか?!  私は、それでは満足できない・・・・・

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