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ただ、逃げて、逃げて、逃げる [心]

物心のついた頃…、いや…、まだ物心もつかず、自分の意思で歩くこともできなかった幼い頃から、毎晩同じ夢にうなされ続けた過去がある。

2752841夢の中のまだ幼い私は、祖母の背におぶわれて、自宅横にある寺の境内を抜けてその裏手にある祖母の家(母の実家)へとむかう。
そして、祖母の家の門前の際にタンポポが咲いているのを見つけた私は、祖母の背より、「そのタンポポを取って!」とねだり、
祖母が少し腰をかがめたその時、
視界の開けた私の目の前に、突如、巨大で邪悪な黒い怪物が私めがけて襲いかかってくる、
という場面で悲鳴を上げて、その自分の声で私は夢から覚める。
毎晩、毎晩、全く同じ夢を見て、同じ所で悲鳴を上げて大泣きをする私。
そして、恐怖の夢から覚めた後には、現実の恐怖へと続き…、毎晩大泣きをする私にたまりかねた父によって、私は毎晩、真っ暗な小部屋に一人きりで閉じ込められて、恐怖心をかき消すように泣き叫んだ。

いつ頃からこの夢を見始めたのかは定かではないが、妹が生まれた時には一人部屋を与えられたので、それ以前…   多分、1,2歳の頃から、3,4年間、毎晩、毎晩、まったく同じ夢を見続けてうなされた。

実際の身体の成長と共に、夢の中の私も成長して行った。
4,5歳になった頃、走れるようになった私は、夢の中でも、もう祖母の背におぶわれることはなくなり、いつの間にか、毎晩見続けていた同じシチュエーションのあの夢を見ることはなくなったが、しかし、得体の知れない恐ろしいものから必死で逃げる、という夢に毎晩うなされることには変わりなかった。

考えてみたら、物心つかぬ頃の夢の記憶を持っているのもおかしな話しだが、毎晩見続けたあの夢の光景は、夢に出てきたタンポポの花びらを数えることが出来るくらいに、今でも鮮明に覚えている。

就学前から毎晩見続けていた逃げる夢。
いつも、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げ切れることなく恐怖で夢から覚める。
何に追われているのかわからない…。
何が恐怖なのかもわからない…。
ただ、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、ひたすら逃げて、・・・・・
そんな夢を十数年も毎晩見続けていると、逃げ足だけは速くなり、私は恐怖に慄きながらも早く逃れるコツを覚えて、逃げ上手になって行った。

高校生になったある日、夢の中で私は薄暗い林の中を逃げ惑いながら考えた。
私を追ってくるのは誰なの?! 
この恐怖の正体は何なの?!
私は、ありったけの勇気を振り絞って逃げることを止めた…
そして、恐怖をかき消すように大声を張り上げながら必死の思いで振り返った。
何て叫んだのかは覚えていないけど、あの時の勇気と、振り返った時の光景は今も忘れてはいない。
何も無かったのだ…
私を追ってきた邪悪な黒いものの存在も、振り返ったその景色の中には、誰も、何も無かった…

15年間、毎晩見続けた逃げる夢は、その日を境にピタッと見なくなった。

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