SSブログ

“生き物” と “食べ物” [心]

“生き物”と“食べ物”に違いはあるか? こんなテーマで考えてみる。

今日、早朝から海釣りに出かけていた夫が夜遅くに帰ってきて、本日の成果を嬉しそうに報告した。
魚の方は既に死んでいたが、イカはまだかすかに生きていた。
「まだ新鮮だよ♪ どんな料理を作ってくれる?」と、夫はとても楽しそうだが、私の心は複雑だった。
いつも思う・・・  釣りなんて残酷な趣味だわって・・・。

夫の釣ってきたイカは、もう動く力は残っておらず、吸盤もほとんど吸い付くことも出来ないが、イカは最後の力を振り絞って体の色を変化させては敵意を表わしている。
釣られたその場で絞められる(さばかれる)のと、息絶えるまで何時間も苦しい思いをしなければならないのと、イカにとってはどちらの方が不幸なことなのか・・・・・? などと考えさせられた。

人間だって同じである。
私たちは、生きている間のことしかわからないから、病気で苦しんでいる人を目の前にすると、いっそうのこと死んだ方のが楽になれるんじゃないかと思ってしまう。
私もかつてはそう思っていた。
病気の為に、苦しんで苦しんで苦しみぬいた挙句に死んでいった母に、「もう苦しまなくっていいから、ゆっくり休んでね」と、心の底から信じてそう言葉をかけた。
でも、生きている間の母の苦しみは、私の目で見て知っているけれど、死んだ後のことは、単なる私の空想、そして当てのない願いでしかないのだ。

死後の世界を明確に教えているのは仏教しかない。
そのお釈迦様が仰るには、「生あるものがひとたび死ねば、この世の苦しみとは比べものにならないほどの極苦の世界に落ちていかねばならない」と説いておられる。
なぜならば、因果の道理という真理のもとに、因果応報は免れることが出来ないからである。

夫が釣り上げたイカは、いつの世か、夫自身が釣り上げられて、それで業は果たされる。
夫がイカを火で炙ったならば、夫もいつは火で炙られ、夫がイカをまな板の上でさばいたならば、夫もいつかはまな板の上で生きたまま皮をむかれて体に包丁を入れられるのだ。
人ごとでは決してない。 私もそうやって生きている。
それどころか、私のズルさは夫を上回っているかもしれない・・・。
だって、死にそうな状態で苦しんでいるイカを見て、「残酷だ、かわいそうだ」などと言っては目を覆うくせに、皿に盛られた刺身の状態になれば、「美味しい」と言ってそれを口に運ぶ。
いつの間にか、“生き物”から“食べ物”へと呼び名を変えて満足している私・・・。

以前、御法話の中でG先生が、「人間は、“生き物”を、自分の都合で“食べ物”と呼称する」と、お話されたことがあった。
まさに、それだ!
どこまでが“生き物”で、どこからが“食べ物”なのかは、まったく人間の都合で分別しているに過ぎない。

そういえば今日の夕方のニュースで、「動物虐待に反対する団体」がいかに素晴しいかということをニュースソースにしていた。
彼らは、人間がペットと呼ぶ動物に対しては愛護するが、その一方で、家畜として分類した動物に対する愛は全く無い。
「動物虐待に反対! 動物愛護は素晴しい!」と言いながら、牛さんや豚さんや鳥さんを口にしているのだから、チャンチャラおかしな話だ。
“生き物”と呼ぶのも、“食べ物” と呼ぶのも、“ペット” と呼ぶのも、“家畜” と呼ぶのも、全~部人間様のご都合で、何が“悪”で、何が“善”かも、人間様が自分勝手にこしらえた妄想でしかない。

“生き物”と“食べ物” に違いはあるか? という疑問自体が間違っていた。
私が“食べ物”と思っている肉も魚も、みんな“生き物”なのだ。
私は、それら“生き物”の命を犠牲にした上に生きているのだ。
自分の都合で “食べ物”にしてしまった“生き物”たちに、慰霊碑だとか慰霊祭なんかで誤魔化したって、なんの償いにもならない。
私が“食べ物”にした分だけ、私も“食べ物”になるということ。
これを信じられないだとか、生きてく為には当たり前の摂理だなどと、どんな言い訳を並べたところで、因果の道理は変わらない。

実際には、目に見えぬ真実など信じることなんか出来ないけれど、お腹が満たされている時だけは、“生き物”を“食べ物”と呼ぶことに、少しだけ胸が痛む私なのである・・・・・

P.S. コウイカのお刺身は、イカ味噌とダシ醤油を混ぜたもので食べると上手い[わーい(嬉しい顔)]  (懺悔[あせあせ(飛び散る汗)]

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。