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代理ミュンヒハウゼン症候群 [心]

ニュースで、代理ミュンヒハウゼン症候群という名の病気を初めて耳にした。
調べてみると、周囲の関心を自分に引き寄せる為の工作を実際に行動に移してしまう精神的な病気だそうだ。
‘ミュンヒハウゼン症候群’という、自らが虚偽話をしたり、自傷行為に及んだり、病気を装ったりする症例に対して、自分以外の他者を傷害対象として、これに関連させて周囲の関心を自分に引き寄せ、精神的自己満足を得ようとする症例を‘代理ミュンヒハウゼン症候群’というそうである。

今回の事件は、35歳の母親が、五女(1歳10ヶ月)の点滴に腐敗した液体を混入した殺人未遂罪で逮捕され、その取調べの中で、昨年、入院中の四女(生後八ヶ月)に対しても今回と同様の手口で死に至らしめたとされ再逮捕となった悲劇的な事件である。
被疑者である母親は、七年ほど前に死亡した次女(三歳)の看病をした際、周囲から褒められ、認められたことに喜びを覚え、この時の自己満足を満たす優越感が忘れられずに今回の事件を引き起こしたのだと報道された。
私は、彼女(被疑者である母親)のことは何も知らない。
でも、彼女の気持ちはある程度理解できるような気がする。

世間の人は、この事件の残虐性を面白おかしく話題に取り上げては彼女を非難している。
精神学や心理学のおエライさんは、自論で彼女の人物像を固めて偉そうに論じている。
でも、人間は誰でも彼女と同じ心を持っているものだと私は思う。
褒められたい、認められたい、気遣われたい、いい人だと言われたい、尊敬されたい、私の存在を知って欲しい・・・・・
そんな自分の欲望を満たす為に私は生きているのだから・・・・・
この欲望を満たす為の方法を、彼女は自分の子供に手をかけるという道にしか見出せなかった為に悲劇となってしまった。

この事件と、彼女の気持ちを思う時、私はなぜか涙が出てくる。
物心がついた頃から私はず~っと彼女と同じ思いに苦しんでいた。
幼い頃は、両親に注目されたくて大声で泣き叫んだり、おもちゃを投げ捨てたりして言葉にならない感情を丸ごと親にぶつけることが出来た。
少し知恵が付いてくると、親や先生に褒められたいが為に道徳的に良いとされることをしては周囲にアピールするようになった。
学生時代は、周りから除け者にされるのが怖くて自分の本心を隠して生きることを学習しながら、それでいて自分という人間の存在を周囲の人たちの中に確認しながら生きてきた。
社会人になると、会社や組織の中で認められたいが故に頑張る。
表向きは会社の為に業績アップといいつつも、常に自分の立場や周囲から見た自分という者を意識しながら、ただひたすらに自分の為に仕事に精を出す。
私は幼い頃から今現在までず~っと、そしてこれから先もず~っと、独り孤独な生き方はしたくないし、いつだって周囲から認められて生きていきたいと思っている。
その腹底にあるのは、自分が一番可愛いという自己愛の心だ。
私は、この私のプライド高き自己愛の心を傷つける者は許せないし、これを心地よく満たす為に頑張っているのだ。

この事件の彼女も一般人と同様に、人間の本性そのままに自分を愛し、自分の存在をアピールしたかっただけなのだと思う。
専業主婦という仕事を認めて褒めてくれるのは、家族と近所の目しかない。
彼女の心の隙間に、「次女を看病している良き母親」という春風が吹き込んだ時、彼女はどれほどの喜びを覚えたであろうか・・・
彼女がやってしまったことは、決して肯定できることではないし、非難されてしかるべきであろう。
しかし、私も、彼女と同じ行動こそしないものの、一人の人間として、心の中ではいつも、褒めて欲しい、認めて欲しい、気遣って欲しいなどと叫びながらも、本心は隠して常にいい人を演じ、自分の存在をアピールしながら生きているのだということを、この事件を通して教えてもらった。
ミュンヒハウゼン症候群というは、決して特別な疾患などではなく、人間である以上誰もが抱えている心の病ではないのだろうか。

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